2012.04.15    カテゴリ:  古人に学ぶ 

   私の履歴書(中村汀女)より 初夏の宵、小舟でみる蛍火

『ふわりとした初夏の夜闇(よやみ)は蛍(ほたる)の出る闇であった。

 父が舟を出して向こう岸の湧き水の浅瀬に連れてくれる。その清水の湧き口には白い野茨(いばら)の花が咲いて、そこに大きな蛍火がみだれあっていた。そこら砂地のくるぶしまでの水の流れが足にさからった。芹(せり)やクレソンがふかふかと生い茂り、沢がにを押える場所でもあった。

 何しろ、水辺のことはきりなく浮かぶ。ずいぶん前のことだが、星野立子さんが「江津湖のこと、あなたはしぼればしぼるほど書くことがあるのね」といい当てて下さったが、たしかにきりがない。そろそろ私も女学生、父はいわゆる画図の村長をやっていた。』


中村汀女120325


2012/03/25撮影 熊本近代文学館にて

引用:
私の履歴書 中村汀女(日本経済新聞 昭和47年5月13日~6月4日連載)⑤より






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