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2019.02.03    カテゴリ:  古人に学ぶ 

   仙助老人とぶえんのいお


爺やん、あんた、百までも生きるような体しとって、腰ちんば引いて。石もなかところで、ぱたっとこけたりするとは、そらきっと水俣病じゃ。あんた目えにはまだ来んかな、目えはまだどげんもなかかな、こう爺やん。

なんばいうか。水俣病のなんの。そげんした病気は先祖代々きいたこともなか。
俺が体は、今どきの軍隊のごつ、ゴミもクズもと兵隊にとるときとちごうた頃に、えらばれていくさに行って、善行功賞もろうてきた体ぞ。医者どんのなんの見苦しゅうしてかからるるか。

そるばってん爺やん、ほらほら、せっかくの焼酎がいっこぼれてしもうて、地が呑んでしもうたが。こげんところつっこけて。目えもどげんかあっとじゃなかろうか。



この病にさえかからんば、あん爺さまは、きっと百まで生きらす爺さまじゃったよ。

そげんいやあ、あんわれ(あの人)も、ぶえん(無塩のとりたての魚のさしみ)の好きな人じゃったでのう。




引用:苦海浄土 わが水俣病.石牟礼道子.講談社文庫


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